安政時代の万国旗本が見つかりました。1854年(169年前)

木箱に外題付きの折本である。松居南岱(なんたい)編。松居南岱または松居信(しん)は、安政期に活動した絵師で、他に『御当地御名残 市川市蔵』等の錦絵作品が残存するが、詳細不明の人物である。彩色絵入り。著者筆によると思われる付箋がある。嘉永7(1854)年出版。なお、岩瀬文庫・静嘉堂文庫等にも同名本がある。

 聞いたことのない国が沢山出ていて想像の翼がひろがります。

母の家の断捨離の第二段階でみつけました。

とりあえず捨てたらいけないものの部類です。

この薄っぺらい木箱を見つけた時は何だろうと思い、少しドキドキしました。

ぴったり箱に収まっているので、箱の側面の引き戸のようなところを少しずつずらしてとりだしました。

 素敵なデザインの旗の数々。そうっとなぜると凹凸があります。

 よく見ると、印刷ではなく、描いたもののようです。

 空想の国の国王になったつもりで、あなたもこのデザインを参考に旗をつくりませんか?

 前にマクベスの劇の旗をお作りしたことをふっとおもいだしました。

 あなたが国王になったらどんな旗をつくりますか?

 私共は素敵なデザインの旗をつくりたくてうずうずしています。

 

 

 

『万国舶旗図譜』(ばんこく はくき ずふ)

         「舶旗」とあり船舶の国籍標識を表すもの。序文参

 

【刊行年】 嘉永甲寅秋新雕――嘉永七年(一八五四)秋新彫  嘉永七年=安政元年(十一月改元)

 

【著者】  南岱松居信――南岱(なんたい)は号。姓は松居、名は信。

      絵師、詳細不明

 

【出版元】 不老館 (内表紙の判に、「両國 村松町 松居」とあり、著者と出版者は同一と思われる)

 

 

 

≪釈文≫

 

表紙  「萬國舶旗図譜」

 

内表紙 「通  嘉永甲寅秋新雕

     計  官許

     四  萬國舶旗図譜

     百    不老館蔵板 (印文「両國 村松町 松居」)    

     八

     十

     章  ※「章」は「しるし」の意味            」

 

舶旗用例「一、西洋各国ノ船。其形状異ナリト雖モ。遠ク望ムトキハ皆相似

       タリ。故ニ各々旗ヲ以テ章ヲ分チ。某ノ舶タルヲ知ラシム。其

録中ニ挙タル文書共ヲハ、併記スト云ヘトモ

   建ル所ハ。艫(へさき)檣(ほばしら)ノ後ノ方ニ斜メニ出タル帆桁。或ハ艪ノ端ニ

        旗竿ヲ挿テ。其國ノ旗章ヲ建ツ。」

         帆桁旗竿等ニ建サルトキハ。矑檣ノ上ノ後ニ建ツ。

                         アンナイ

 一、港内近ク乗リ来テ。其地勢ニ熟セス。郷導ヲ乞ハント欲

        スル時ハ。舳(へさき)檣ノ上ニ自國ノ旗ヲ建ツ。

      一、舩中(せんちゅう)災厄ノ事アリテ。扶助ヲ乞ハント欲スル時ハ。舳檣

        第二段ノ縄梯子ニ旗ヲシホリテ建ツ。

      一、舩中郷導ノ人ヲ呼ヨセントスルカ。或ハ陸地。或ハ他舶等ニ。

               テンマ

        指シ向ケタル。小舸ヲ呼ヒ帰サント欲スル時ハ。臚檣ノ

        後ノ方ニ一段高ク建ツ。

      一、争乱ノ世ニハ。旗ヲ建サル前ニ。大礟(たいほう)ヲ一発シテ。然ル後ニ旗ヲ

        建ツ。是敵國ニ非ルヲ。示ス所ノ信ナリ。

      一、敵ヲ欺ント欲シテ。大礟ヲ発シ。偽旗ヲ建ツル等ノ事ハ。 

        決シテアルコトナシ。是レ各國会盟シテ。定メタルトコロノ法ナ

        リト云。

         此他種々ノ旗ヲ建ルコトアリト雖モ。ソハ皆各國其意ニ

         任スル所ニシテ。西洋一定ノ法ニ非レハ。其旗ヲ以テ某ノ國

            ミトム

         タルヲ認ヘキニハ非ルナリ。

 

(付箋)

①イキリス 此三図ハ   ②イキリス  二図     ③イキリスニテ蒸気舩(船)

文化五戊辰年八月     嘉永二己酉閏四月      ヲ用コト

長嵜(崎)ヘ渡来舶旗    長嵜へ渡来舶旗       文化十一甲戌年ニ始

 同十三丙子念七月     此外ニ立アル旗前ニ出ス

 

西海へ漂流

弘化二乙巳年七月

伊王島漂流

各同旗ナリ

 

④南京          ⑤禮旗                    ⑥寛政十戊午年二月

 安永九庚子年五月     一名媽祖(まそ、航海の守護神)旗トモ云ナリ    銚子湊江漂流舶旗

 上総国勝浦ヘ漂流ノ    マソウハ舶菩薩ノヨシ             琉玖(球)ハ 

 舶旗ナリ         明和二乙酉年十月               大日本薩陽(薩摩)ノ属国ト云トモ 

              漂流ニモ此旗ヲ立               舶形ノコトナルヲモツテ

                                     出ス旗ノ紋色々有ヨシ 

 

⑦厄勒祭亜(ギリシヤ)          ⑧「ロシヤ」始ノ四図ハ寛政    ⑨同  中ノ四図ハ

 今ハ「都児挌」(トルコ)ノ属国   五癸丑年正月松前江         文化甲子元年九月

 ニハアラズ           渡来舶旗也            長嵜ヘ渡来舶旗

                 其外ニ立有旗ハ前ニ出ス      同四丁卯年四月長崎ヘ

                                  渡来同旗ナリ

                                  其外ニ立アル旗前ニ出ス

 

⑩同    末ノ七図ハ     ⑪「如徳亜(ユダヤ)エリサレム」   ⑫寧波(中国 現 浙江省寧波市、ねいは)

 文化十癸酉年九月        古図ニヨツテ此所江         宝暦元年辛未年

 長嵜ヘ渡来舶旗         出スト云トモ今ハ         寛政十二庚申年 

 其外ノ旗前ニ出ス        「都児挌(トルコ)」ノ属国ナリ    十二月遠州山名浦

 近来ハ此十五品ノ旗多ク                      漂流舶旗

 用ルヨシ                             文政九丙戌年