大津にて

大津 行楽庵にて

 音をきく、香を聞くという言葉がありますが、口の中の薄味の味覚が塩味、甘味、酸味がそーぅと溶け合い,ひとつの音になる瞬間がかんじられます。

張りつめた細い糸のようなハーモニーの瞬間、私には味覚を超えたところに音が奏でられる、そんなお料理に出会いましたことをこの上ない幸せにおもわれました。

 大津の行楽庵での1組限りの夕食を頂き、静かに味をきくことができました。紅をさした一口のお団子の中のほんの少しのフォアグラ、薄い甘みと溶け合い口のなかに静かにひろがる...

鮒寿しのちいさいひとかけが酢の物のなかで、そーぅと存在を主張する...

 まるで魔法をかけられたみたいにおとなしく目をつむり、味のひろがりに身をゆだねていました。

 デザートのオランディーヌソースがまたもや、やさしくいちごをつつみこんでいました。いちごの味が死んでしまわないようにとバターは無塩。やさしい気づかいでいちごは元気をもらって

いる。ソースのレモンがやさしい酸味となりいちごの酸味をひきたてている...